データベースを作る時、まず話したのが「誰が使うのか?」ということです。これから来日するかもしれないフィリピン人看護師や介護士の方々は、学歴をはじめ専門分野の資格や日本語学習歴という情報はある程度共通していて、想定できる範囲の人々ともいえます。ここでの「誰」とは専門職に就く、非漢字圏の初級学習者ということになるでしょう。
外国人看護師・介護士を受け入れる、という話題がマスコミをにぎわしたころ、もう一方で、すでに日本に生活の基盤を持つフィリピン人女性で、介護の仕事をめざす動きを伝える報道番組がしばしば登場しました。それに触れるたび、私たちは、彼女たちも「日本語でケアナビ」の潜在的ユーザーではないかという印象を受けるようになりました。
「日本語でケアナビ」は一般に公開されているサイトですから、ユーザーを制限する規定は全くありません。しかし、その中心ユーザーとはどんな人たちなのか。もしもそれが日本に居住するフィリピン人介護士さんたちだったとしたら、それはどんな人なのでしょう。私たちはその「ペルソナ」、つまり具体的な人物像を描いてみようということになりました。
ペルソナを描くには、まずその人の名前を考えることからはじめます。介護をする人を「フィリピン人介護福祉士」という属性を呼ぶのではなく、たとえば「西村ビビアン」さんという個人の名前で呼んでみます。この「西村ビビアン」はまったくのあてずっぽうなので、同姓同名の方がいらっしゃっる場合は、本当に申し訳ありません。私たちのねらいは、そこに現実的な響きがあれば、ということです。
ビビアンは来日10年あまり。出身はマニラ郊外の農村で、現在は関西在住、年齢は30代後半。家族は日本人の夫と小学生と中学生の子ども2人。夫の母親も同居。講習を受けてホームヘルパー2級資格を取得した後、現在、パートで介護施設で週3日働いている。
勝手な空想ですが、マスコミ報道に出てくる事例や関連分野の報告書などを参考にして考えていきました。さらに、宗教、故郷の家族、彼女がどうして日本へ来たか、今どうして介護の仕事をめざしているのかなど一歩踏み込んだプロフィールを描いていきます。
それを日本語学習環境について広げていくと、
これまで仕事で会話を習得したが、語学学校などで正式な日本語教育を受けた経験はない。日本語力は、家族との会話は問題ないが、夫の母親を通じた近所づきあいでは、方言が聞き取れないことがある。
- 「ビビアンはわかる漢字も限られている。」
- 「自宅でパソコンが使える環境はある。」
- 「じゃあ、入力はローマ字がいいんじゃない?」
- 「もしかしたら、自分の子どもも大きくなってきて、漢字の勉強を助けてくれるかも・・?」
等など、想像が広がっていきます。
架空にすぎませんが、一人の人物像を具体的に思い描くことによって、「~こうであるべき」という「べき」や「なければならない」から距離をおくことができる気がします。それによって「介護福祉士は漢字が書けなければならならい」から「ビビアンに必要な漢字はどのようなものか」と発想を転換することも可能になるのではないでしょうか。
人の数だけ現実はあるのですから、すべての「ペルソナ」即ち人物像や人生を描いていくことはできませんが、少なくとも現実社会に暮らす人にとって、使いやすいものとはどのようなものなのかを考える手立てにはなると思います。
「急がば回れ」になりますが、使い手を考える方法として、ペルソナを描いてみること、その発想を大切にしたいと思っています。
2007.10.10 18:37 - うえだ


