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2008年3月のシンポジウムの詳細が決定!

うえだ

理論というナビゲーター

介護と日本語(3)

三好春樹(2005)『ウンコ・シッコの介護学』雲母書房

三好春樹(2007)『老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた』新潮文庫

いかがですか?強烈でしょう。これらのタイトル。

特に『ウンコ・シッコの介護学』は、はじめに新聞の広告欄で見つけたとき、一体どんな内容の本なんだろうと思いました。ちょうどこのプロジェクトがはじまった2005年の春です。実は、私はすぐには読まなかったのですが、まえちゃんが読んでいる間じゅう、しきりに感心し、しばらくはバイブルのように机上に置いていたのを覚えています。

この本と同じ頃出版され、同じく机に並んでいたのが

三好春樹(2005)『介護の専門性とは何か』雲母書房

これはアカデミックな雰囲気ですよね。タイトルから受ける印象はかなり異なりますが、両者とも介護とは誰のために何をすることなのかという本質的なことを、正面から扱った大変深い内容の文献です。かといって、理論武装してそれを上から押し付けるのではなく、著者の介護の専門家としての歩みとそこで出会った数々の老人たちとのエピソードを紹介しながら、ユーモアたっぷりに「当たり前のこと」をわかりやすく説いているものです。

「当たり前のこと」というのは、みんな知っている当たり前のこと、という意味ではなく、当たり前のことなのに、みんな気づいていないということです。介護というのは、健康とは言えなくなった老人が、普通の本来の日常生活を送れるようにするための手伝いをすることで、そこに介護の専門性があるということです。

その典型的な例が「おむつはずし」です。人間、年をとっても尿意、便意がなくなるわけではないそうです。神経伝達速度は多少遅れるかもしれませんが、感覚が亡くなることはない。しかし、老化現象としてトイレへ行くのが間に合わなくなることはありがちです。原因は何十年も働き続けてきた尿道括約筋という筋肉が緩んでいくことによるそうです。

著者は自身もおむつをつけて排泄することを試みます。それがどのような感覚を与えるか、そうなることで老人は人間としての何を失っていくか、ということが経験談とともにのべられます。

「お漏らし」はしかたないこと。でも、だからといって、オムツをつけたままで用を足すようにしなくても、トイレで用がたせると主張します。

そのためには介護の現場に何が必要か。ベッドの高さ、ポータブルトイレなど、どんな環境を整えなければならないのか。そして介護職は、介護の現場で何を見て、どんな老人の声を聞き、発せられるサインを感じとり、分析しなければならないのか。そうやってどんどんと「おむつはずし」が繰り広げられていきます。

オムツから始まって、寝たきり、機械での入浴、寝たままの食事、訓練といわれるリハビリテーションなど、介護の実態に疑問をなげかけていきます。科学的だといわれる処方の理論の限界を論じています。

著者は偶然入った介護の世界で、様々に異なる個性あふれる老人たちに出会い、介護を体験します。その後、「理論」を学ぶ機会を得て3年間を費やしたそうです。それによって、介護施設で会った老人たちの不思議な言動が、実は病によるものであることや、人体の構造を詳細に学ぶことで老人たちの機能的障害を補助する方法を理解していくという経験をしています。養成所で学ぶ専門用語で表される症状の一つ一つに、具体的な老人の顔がうかんだそうです。介護現場の個別ケースと理論とが出会った瞬間です。老人への理解が深まっていきます。

その後、著者は介護現場にもどり、一人ひとりの老人たちの個別の老いを見つめ、人体ではなく人生を見ています。介護の仕事は、個別の人生を持った人間の日常生活を生き生きと過ごせるように手助けする仕事であることだと気づいていきます。介護を通じて人間性を復活させていく個別の老人のケースとともに、著者自身の体験がつづられています。

これらの書籍を読んでいると、なぜ、著者が衝撃的なタイトルをつけたのか、ということに思いが至りました。もちろん、多くの読者を惹きつけるためでしょう。それは、専門家用の本とするのではなく、より多くの人に介護の中身を知ってもらいたい、すべての人が知るべきだ、という著者の意識の現われだと思います。介護の世界は健康な人と病気の人と分けられた二つの世界の間にあると言います。それは、すべての人の隣にあります。

理論と現場をつなぐ、老人の主体性を考える、動機付けのない訓練は続かない、

このようなフレーズは、私にとって、どこかで聞いたようなことばばかりでした。それも、とても身近で。

これらの文献がちょうど「日本語でケアナビ」のプロジェクトが始まった頃に続々と出版されていて、ほんとうによかったと思います。看護、介護。ケアというものを考えるだけでなく、それが私たち日本語教育の実践とつながろうとしたからです。

著者の三好春樹氏は、NHKの「なるほどなっとく介護」という番組にもご出演で、著書も多数執筆しておられます。

2008.02.27 14:39 - うえだ

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