日本語のバリエーション
日本語の教科書で紹介されている日本語だけでなく、現実には同じことを表現するにも、様々な表現が用いられています。
- 職業に特定できる用語、業務に特定の用語
- 就業するところ(施設、機関)によって特徴のある用語
- 居住する地域によって特徴のある方言
など、日本語にはさまざまなバラエティーがあります。
特に3)の方言です。日本中の介護施設を見回してみても、標準語だけでコミュニケーションをとっているところというのは、むしろ少数派ではないでしょうか。実際は、日常的に方言を使用していることでしょう。だからこそ、現場に入って、どのように方言が使われているか、調べる必要があるといえるし、現場で得てきた方言を用いた言語資料を、データベースの資料としてどのように活用していくか、検討すべき課題だと言えます。
現実的なバラエティーをどう反映するか、言語プログラム設計で必要なことですが、今回の「日本語でケアナビ」開発プロジェクトでは、これを初級学習者支援素材の開発という立場に止め、最優先項目としない決断をしました。
できないこと
看護師さんが働く現場は、診療科によって専門用語が異なったり、現場特有の略語があるなど、実に多様です。看護の専門用語に関して、何をどの程度採用するか、つまりこのデータベースの範囲とするか、プロジェクトを通じて悩みの種でした。その結論の出ないままデータ集めの作業をすすめるうち、次第に私たちは、自分たちのできることとできないことについて考えざるを得なくなってきました。
看護学についての用語の多くは、私たちが関与できる範囲を超えています。また、幸い専門用語にはその専門の辞書がたくさんあります。
そして、そもそもすでに専門領域の資格を持ち、実務経験もある人々が来日するということですから、専門用語に関する事情を詳細に提供することは、日本語教育の領域ではないのではないか、と考えるようになりました。
できること、すること
では、データについて、現実の場所での検証を全く行わなくていいのか、出版物だけでデータベースを作成して、それが実用に耐えうるものになるのか、という課題はまだありました。
そこで、このプロジェクトでは、出版物を中心とした言語資料を基にしてひとまずたたき台を作成し、それをもとに実際の運用者、つまり、
- 日本語を学習する人
- 看護や介護の仕事をする人
- 学習者の日本語学習を支援する人
を対象に、その資料が使えるものであるかどうか、足りないものは何か、という視点で検証する方法を採ることにしたのです。
「目標言語調査」について、前回挙げた文献では、いずれも調査として「できること」は何かを考えること、特に学習者の目標言語調査では学習者とともに検証すること、についても言及しています。
はじめに調査、計画、それから実行、という流れを念頭に置きつつ、それらを現実とどうすり合わせていくのか、とうこと。これは必要なことであり、難しいことでもあります。現実になし崩しになるのではなく、そこでどのように合理性、整合性を確保しつつプロジェクトを進めていくのか、常に考えさせられる課題です。
2008.02.21 14:41 - うえだ


