こちら「日本語でケアナビ」開発室

2008年3月のシンポジウムの詳細が決定!

たなか

日本語でケアナビの「いま」

多言語での医療現場サポート

写真:エムキューブの多言語パンフレット
M³の案内パンフレットは、いろいろな言語で書かれたものがあります。使い方の案内役はマスクをした「もりこさん」です。
看護や介護、医療の現場で、異なる言語を使う人たちのコミュニケーションをインターネットやコンピュータを使って支援する試みは、もちろん、「日本語でケアナビ」だけではありません。多言語医療支援システムM³(エムキューブ)も、その中の一つです。
今回、M³の開発スタッフの一人である多文化共生センターきょうとの前田華奈さんに、完成までのプロセスについて、お話しを伺う機会がありました。
多文化共生センターきょうとは、システムの設計やシステムに入れる用例の収集と作成、その翻訳などを行っており、その中で前田さんは、全体のコーディネートを担当されています。「日本語でケアナビ」の開発プロセスや考え方と、共通することがたくさんあったので、それについて、少し紹介したいと思います。

M³とは

M³というのは、病院での受診をスムーズにするための情報を
英語、中国語、ポルトガル語、韓国語、日本語で表示し、
患者と医療者とのコミュニケーションをサポートするシステムです。
多文化共生センターきょうとや和歌山大学、
言語グリッドプロジェクト(NICT)などが協働で開発し、
2007年9月から、京都市立病院に設置されています。
画面に手で触れることによって操作し、
受診のための質問や、診療科への道順などが分かりやすく表示されます。
必要な情報は、紙に印刷することもできます。

シンプル・イズ・ベスト

M³の画面を見せてもらって、まず感じたのが、
画面がシンプルで、わかりやすいということです。
操作に不慣れな人でも使えるように、
画面に出る情報をできるだけ少なくしたそうです。でも、同時に
「あれば役に立つ情報もたくさん見せたいという気持ちもあります。
 どう折り合いをつけるか、なかなか難しかったです」
と前田さん。
「日本語でケアナビ」の画面でも、同じような葛藤がありました。

画面表示の制約

M³の操作はタッチパネル式ですが、画面上のボタンについて
押しやすさの確保のため、ある大きさ以上の面積が必要だ
という制約があるそうです。
それから、いろいろな言語で表示されるわけですが、
言語によって必要な文字数や改行できるかどうかなど、
条件が異なってきます。
このため、翻訳する場合にも、単にデータを変換するだけでなく、
翻訳の専門家に実際の画面を見せながら、
確認する作業が必要だったそうです。
「日本語でケアナビ」の場合も、いろいろなコンピュータ環境でも
使うことができるように、文字による情報を表示する場合に、
そのまま文字情報として表示したり、文字を画像にしたりと、
使い分けが必要でした。
ディスプレイ上での情報を表示する場合には、紙にはない独特の制約があり、それなりの工夫が必要になってきます。

翻訳って難しい

「日本語でケアナビ」の語彙や例文の翻訳も難しかったのですが、
M³でも、やはり、いろいろ困難な問題があったそうです。
「はい」という日本語を英語に翻訳するのは、
一見、とても簡単そうに思えます。「yes」にすればいい、と。
M³でも、最初はすべて、そう翻訳されていたそうです。
ところが、例えば、M³は
病院窓口で聞かれる質問をコンピュータに表示して、
その画面を患者さんがタッチして選択していくことで、
対応の窓口へ案内する機能があります。
M³では複数の言語に対応しているため、
日本語では「はい」「いいえ」で回答可能な質問でも、
他の言語になれば必ずしも日本語と同様の答えでは
うまくいかない場合もあります。
これは、翻訳者が画面を見て、初めて気付くことです。
また、複数の翻訳担当者がいた場合、同じ母語話者でも
どこの地域・国の出身かで適切だと感じる表現が違っていたり、
場面や状況を詳しく考えていけばいくほど、
結果として翻訳の文が変わることも少なくなかったそうです。

日本国内のいろいろな地域で、日本語以外の言語を母語とする人たちとの
コミュニケーションをサポートしようとする取り組みが始まっています。
医療や看護、介護もその分野の一つでしょうし、
そこにコンピュータなどの機器を使う試みも多いだろうと思います。
今回、M³の開発の話を聞くことができ、
それらの取り組みで、共通する部分がかなり多くあるのではと
改めて感じました。
そして、それぞれが得たノウハウや情報、経験を共有していければと思います。
このブログで、開発しながら得た知識やエピソードを紹介しているのも、
実は、そうした希望への一歩です。

2008.01.16 14:57 - たなか

次は「ケア現場の日本語(1)」

このトピックの記事一覧へ

コメントする

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。